好奇心は鯖をも殺す

日記

運慶展で鎌倉時代のアイドル達を見よ。

先に言っておくが、これから話をする『運慶展』は11月26日までなので、読み終えたらすぐにスケジュールの調整をしてほしい。

今東京国立博物館で開かれている運慶展に行ってきた。開場30分前に着いたが、既にそれなりの人が並んでいて、休日は時間帯によっては入場規制が掛かるというのもわかる。
この運慶展では仏師運慶やその父康慶を始めとする、主に鎌倉時代に活躍した仏師集団「慶派」の作品が国内各地の寺院から集められている。ただ集められているだけでも見に行く価値のある仏像達であるが、今回は博物館での展示ということもあって、寺では見られない後ろ姿も拝むことができるのだから尚更だ。実際に裏側を見てみると、円光を支える柱が背中から生えていたりして、仏像でも質より実を取るという面白さがある。

個人的な一押しは四天王像だ。数種類の四天王像が展示されているが、特に康慶のものと、運慶のもの-とされている-が良かった。隆々たる顔筋や、内側から水晶をはめ込むことで人間ものと見紛うほどの質感を得た玉眼。唐風の甲冑の金属感、体重を感じさせる腰のひねりや下半身。炎を纏った円光など意匠にも惹かれるものがある。
側面や背後に周ったときに見える荒れや塗装の剥がれに、目の前の物体が木であることを思い出させられ、はっとする瞬間さえある。宗教的アイテムの最たるものであり、実際に手を合わせてから眺めている人も居た。しかし、そうでありながら、宗教性から開放された純粋な造形の美があり、ミケランジェロに喩えられるのも頷ける。ちなみにミケランジェロは運慶より300年遅く生まれた人物である。

言うまでもないことだが、四天王以外の像も良い。人体把握の正確さから来る、溢れんばかりのリアリティの中に、自然に形式的な仏像のパターンを落とし込んでいるのも見所である。例えば、阿弥陀如来の手を注視すると、指の間に水かきのようなものがあるのがわかる(ここまで近寄れるのも最高だ)。これは、入滅後に創作された、釈尊ってすげーんだぜ的エピソードの一つによるものだ。
「いや、阿弥陀如来とは別人じゃん。」と思うかもしれないが、基本的に仏像は釈尊をモデルにしているらしく、釈迦如来に水かきがあるなら阿弥陀如来にもあるっしょみたいな発想でそうなっているらしい。案外適当だ。帰納法かよ。

順路に従って進むと「八大童子立像」が現れる。不動明王の眷属を八人の童子として造形したものだ。その中でも、まず目に入るのが矜羯羅(こんがら)童子だ。
これはネットの一部で有名な像で、自分もひと目見て「おっ、檜山修之立像じゃん。」と思った。その顔つきはまさに檜山修之…と見ていると、後ろから岡崎体育だと言っている声がしたし、それはそれで納得した。東京国立博物館で君だけの矜羯羅童子を見つけ出してほしい。

十二神将はそれぞれ干支の動物の神で、卯神なら兎、酉神なら鶏が頭に乗っている。おいおいコンセプト系アイドルか。と思っていたら、ショップのこれを見て確信した。
アイドル十二神将アイドルだわ。
ちなみに僕は申神(上段左から2番目)ちゃん推しです!紅顔で繋がった眉…ひと目でわかる三枚目キャラが好きです!

売店には十二神将アクリルフィギュアも売っていた。もうラブ○イブ!じゃん。買った。
リアルアイドルのアクリルスタンドと共演させた。
アイドル活動する十二神将うんうん、みんなめっちゃアイドル活動してるね。偶像だし。

当然図録も売っているのだが、ハードカバーに箔押しタイポグラフィ、紙も印刷も良ければ厚みも2.5cm。所有欲を満たすための魔のアイテムとしか思えない。パラパラとめくってみると、大判の写真以外に論文まで載っていて、殆ど説明がなかった展示本体を補う形になっているようだ。
運慶展を見た後は是非図録の購入を検討してみてほしい。護身用にもなる。

繰り返しになるが、この運慶展は11/26までである。
後悔はさせないので是非鎌倉時代のアイドル達に会いに行ってほしい。
最後に、ずっと気になっていたことを皆さんに訊ねて終わりにしたい。この非常にリアルな仏像達には、なぜどれも乳首がないのか。知っている人は教えてください。

Pen (ペン)「特集 2人の男が仏像を変えた 運慶と快慶。」〈2017年10/1号〉 [雑誌]

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