好奇心は鯖をも殺す

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【雑誌を読む#2】『アグリバイオ』遺伝子から昆虫食まで。

今回は「ICT技術の農業への利用」という特集テーマに惹かれて購入した『アグリバイオ 2017年2月号』。中身はほぼ論文で、今やこれからの農業が分かりそうな気がビンビンしてくる。
そもそも一般的な農業についての知識がほぼないが。
アグリバイオ 2017年 02 月号 [雑誌]

ICTというと、(Information and Communication Technology)の略で、要は今まで一般的に言われてきたIT技術にコミュニケーションのCが付いたもの。
中身を読んでいくと、ドローンで上空から撮影することで大規模農場の生育状況などを画像解析によって診断したり、センサ等を設置して遠隔監視することで水田の様子を毎日見回りに行く必要がなくなったりといった研究例が書かれている。
この辺りは農業に限らず最近流行っている分野で、自分も盆栽を手に入れたらセンサとシングルボードPCで自動給水装置でも作ってみたいと思っている。驚きポイントとしては、現場の農家さんは毎日水田を見て回っているという点くらいか。

ただ、一方で我々の普段の生活や農業へのイメージから大きく離れた技術もしっかりあるようで、その一つがゲノミックセレクションだ。
DNA多型の状態から個体や系統の遺伝的能力を予測し、予測した能力をもとに優良個体を選別する手法で、選別の際に栽培実験の必要がない。
DNA多型という入力を与えると、対象形質の値を出力する機械学習モデルを構築することによって成り立つという(機械学習、ニューラルネットワークについては良い解説記事が沢山あるかと思うのでそちらを見てください)。
現在、育種(品種改良)の現場では、世代促成技術を凝らして年に4回の選別と交配が繰り返されている(すごい。)が、ゲノミックセレクションとの組み合わせによってさらに加速させることができるという。
さらに、人工交配シミュレーションによって得られる仮想的な個体や系統のDNA多型にゲノミックセレクションのモデルを適用することで、交配前に対象形質の値が予測でき、有望な交配組み合わせを選ぶことができる。交配の親の選定は育種家の経験と勘が頼りだったらしい。

農業ってここまできてたんだ、と素直に思う。
この他の研究についても、農業以外の分野においても、最近の研究はどこにでも機械学習が登場し、その結果はそのうち机上の空論という言葉すら消してしまうかもしれないと思わせる。
その一方で、毎日原付バイクで方々にある田圃をおじいちゃんが見回る現場の実情もあり、試験場や工場との差を埋めるのもまたICT技術なのかもしれないと思う。

ICTというテーマ以外にも論文が多数掲載されているが、目次を見て気になるのはやはり井内良仁氏による『機能性食品としての昆虫の利用』というもの。
この山口大学准教授は、機能性食品としての昆虫食の認知と普及を目指しているという。言わば昆虫食エヴァンジェリストだ。
昆虫の高栄養をアピールしても現代の日本では逆効果になりかねないからと、健康面で役立つことをアピールして普及を狙うという冷静なのかそうでないのか微妙な所に謎の愛らしさがある。

研究自体は、バッタ類はエビ身と比べても遥かにβカロテン含量が多いという内容で、その中でもショウリョウバッタは群を抜いているようだ。
ショウリョウバッタといえば、幼少期に自宅の庭に沢山いた彼らを捕まえた際に、手の力が強すぎたのか口や尻から茶色い液体を吐き出させてしまった思い出があり、全くもって食料としてのイメージがない。好奇心以外に食べる動機が全くないタイプだ。βカロテンが多いなら食べたいです!とはとてもならない。
この文章では、本題には特に関係ない(昆虫食の普及が本題と考えれば関係はあるが)昆虫試食会の様子として、「アブラゼミの中華風ピリ辛」「マダガスカルオオゴキブリの香味バター焼き」なる料理の写真が掲載されているのもクレイジーが雰囲気があって良い。
香味焼きの写真では、仰向けのマダガスカルオオゴキブリが頭を中央に向けた環状に並べられており、カルト教団の宗教儀礼的な香りも漂う。
ツボにはまったのでこれからも秘かに追っていこうと思う。

ゲノミックセレクションについては岩田洋佳氏の『新しい育種法 ゲノミックセレクション』を参考にした。1)~ アグリバイオ,2,9-13 などと論文的引用表記をしようかと思ったが基本的に適当ブログなのでこのような形になってしまった。

その他昆虫の脳と匂いの記憶についてなど興味を惹かれるテーマも多くあるので読んでみて欲しい。
あと虫が食べられるお店を教えてほしい。

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