都市の本当の隠れ家はお坊さんがやっているお寺のカフェだ。

火曜日の午後、今週の労働が無理だと感じてからは早かった。2分後には金曜日の有給を申請していた。有給を取得すると単純に休日が増える以外に、それを心の支えにすることができるので強い。
働きたくない一心で休みを取ったので、全くやることがない。しかし、せっかくなので自分の精神のためにも充実させたい。そこで、某ルートで知った、お寺でお坊さんがやっているというカフェを調べると、丁度空いているようだったので行ってみることにした。

ぼうず’n coffeeという名前で、池袋の祥雲寺内にある。週1回程度平日にオープンしているらしい。営業日はfacebookで随時更新されているので行く方はそちらを参考にどうぞ。

家から遠いのを、池袋は埼玉の植民地だから概念的に近いなどという詭弁で自分の心を誤魔化していたが、実際行くと普通に遠くて池袋に着くまでで若干疲労感がある。できれば電車にはあまり乗りたくないな。

祥雲寺は、池袋駅西口からまっすぐ10分程歩くと道沿いの右手に現れた。
時々開いてるぼうず'n coffee時々開いているぞ。

祥雲寺境内に入って右手の建物へ。
カーンしてください玄関には金が吊るされていて、「カーン」するとお坊さんを召喚できるシステムになっている。この日は人がそれなりに居てカーンする必要がなかったのが残念。
メニュー玄関で注文まで済ませて席へ行くシステムらしく、ここではカフェモカのホットとどら焼きホイップを選択。全体的にリーズナブルなので欲張っても千円以下に収まりそうだ。
お菓子は手作りで、新商品も随時追加されたりしているようだ。

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DSC02650-2お寺の中を歩いて行くと、畳敷きの書院へ出る。暗めの照明の中、カフェのお客さん達が長机で思い思いに寛いでいる。お茶を飲んでいる人のほか、ラップトップPCで作業をしている人や本を読む人、会話を楽しむ人など、書院に居ながら機能としては完全にカフェだ。自分も空いた席を見つけて人心地つく。

この空間ではやはり緑の庭が見える席が良い。廊下には補色に当たる赤い毛氈が敷かれていることや、鴨居や長押、東障子の格子で仕切られていることでメリハリが生まれ、いつまでも見続けられる景色になっている。風通しがよく爽やかな微風が吹き抜けていた。

DSC02649-2日々のストレスの希薄化を感じていると、注文したカフェモカとどら焼きが到着。坊主が珈琲に上手に葉っぱの絵を描いている。
ただただコーヒーが美味しい。普段あまり飲まない甘めのコーヒーに更に甘味を加えていく。人間は糖分で幸せになれる。
どら焼きを食べ終えると皿の底に現れたのは蓮の花。お寺だけあって、この辺りの小物へのこだわりも感じる。

食べ終えると縁側へ。座布団も用意されていて、腰掛けながら庭を楽しめるようになっている。恋人たちが睦んだり、自分と同じように一人で来た人が何を見るでもなく庭を眺めていたりする。傍らの万古焼の豚の蚊取り線香入れからは煙が立ち昇る。

屋内からぼーっと見ているとただ緑の葉があるという印象だったが、近くで落ち着いて見るとブナ科の木や楓、紫陽花に苔など非常に情報量の多い庭だと気づく。カフェを含め、この空間の癒やしの要因のひとつは、入ってくる情報量の調節が自在なことにある気がした。
自分で望んでいる部分もあるとは言え、PCスマホなどで視覚や聴覚の情報を絶え間なく取り入れ続けると、どうしても心身に疲れが出てくる。自分などは複数のコンテンツを同時に摂取したりしているのでなおさらだ。
それに対して、この空間では何も考える必要がなく、過度な情報が飛び込んでくることもない。そうでありながら、見る人が望めば同じ風景から様々な情報が手に入るようにになっている。

数十メートル外に広がっているはずの、俗そのものである池袋の街路の存在を忘れさせられてしまう空間で、いつまでもそこに居られそうだった。自分より大分前に来ていたであろう人は、自分が帰る頃にもまだ縁側で寛いでいた。
何かを得られるのかもしれないし、何かを捨てられるのかもしれない空間だった。

使わないのに万古焼きの蚊遣豚が欲しくなった。

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